5 - 名詞の変化

5.1 冠詞による変化
5.2 複数形による変化
5.3 所有による変化
5.4 変化の例
5.5 コラム「接頭辞・接尾辞」



5.1 冠詞による変化

ドニ語の冠詞は英語と同じで、定冠詞と不定冠詞があります。定冠詞は話し手と聞き手・書き手と読み手の間で既知の単語或いは推測可能な単語に対して付けられます。敢えて日本語で言うならば「その〜」という単語が一番近いでしょう。不定冠詞は定冠詞の逆で、未知の単語或いは推測不能な単語に対して付けられます。つまりは、特定不能な集合名詞に対して仮に付けられる冠詞です。日本語で言えば「ある〜」になりましょうか。また例を見て戴ければ分かりますが、ドニ語の冠詞は接頭辞のように単語の前部に融合してしまいます。

例) 冠詞による変化
re定冠詞

erT不定冠詞

reKorその本

erTKorある本



5.2 複数形による変化

ドニ語の名詞には英語と同じく複数形が存在します。しかし、英語のように語尾が"s"だったり"es"だったりする事は無く、複数形を示す接尾辞を付けるだけです。複数形を示す接尾辞は冠詞と共に使用する事も出来、その場合不定冠詞の意味が若干変化します。

例) 複数形による変化
KortE本(複数)

reKortEその本(複数)

erTKortEいくつかの本(複数)



5.3 所有による変化

ドニ語の名詞では、その名詞が示す事物の所有を明記する必要がある場合、接尾辞によってそれを示します。所有を示す接尾辞は6つあり、人称(1人称・2人称・3人称)と単複(単数・複数)の組み合わせによるものです。(Fig.5-1)

所有を示す接尾辞
(Fig.5-1) 所有を示す接尾辞



5.4 変化の例

では、実際に変化させてみましょう。今回は「本」という意味の名詞を変化させてみます。冠詞と複数形の接尾辞は共存出来ますが、冠詞と所有を示す接尾辞は共存出来ません。また、複数形の接尾辞と所有を示す接尾辞は共存出来ますが、その場合複数形の接尾辞の方が前に来ます。

例) 冠詞・複数形による変化
reKorその(1冊の)本

erTKorある(1冊の)本

reKortEその本(複数)

erTKortE何冊かの本

例) 所有を示す接尾辞による変化
KorO私の(1冊の)本

Koromあなたの(1冊の)本

Koron彼/彼女/それの(1冊の)本

Korot私たちの(1冊の)本

KorOtあなたたちの(1冊の)本

Koros彼ら/彼女ら/それらの(1冊の)本

例) 所有を示す接尾辞+複数形による変化
KortEO私の本(複数)

KortEomあなたの本(複数)

KortEon彼/彼女/それの本(複数)

KortEot私たちの本(複数)

KortEOtあなたたちの本(複数)

KortEos彼ら/彼女ら/それらの本(複数)



5.5 コラム「接頭辞・接尾辞」

動詞の変化、名詞の変化を見てみると、ドニ語には接頭辞・接尾辞が多い事が分かります。さて、普通、接頭辞や接尾辞によって語形や語意が変化する文法を持つ言語を(比較)言語学では「膠着語」と呼びます。膠着語は一般的に細かいニュアンスを表現出来ますが、それ故に使いこなすのはとても難しいものです。しかし、ドニ語の文法をよく見てみると言語学で言う膠着語とは若干異なる事が分かってきます。膠着語の例としては日本語がありますが、日本語の文章は長くしようと思えばいくらでも長くする事が出来ます。それに比べて、ドニ語の文章は長くするにも限界があります。また、語順も割合厳格で、ドニ語は膠着語というよりは英語やフランス語などの印欧語が代表する屈折語に近い物と思われます。では、ドニ語の「接頭辞・接尾辞」とは何なのでしょうか。それを念頭に置いて第3講の品詞の項目を読み直してみると、答えは明白です。ドニ語の「接頭辞・接尾辞」は、英語などで冠詞や前置詞として分離している単語が、名詞や動詞と融合してしまっているだけなのです。つまり、接頭辞や接尾辞など普段聞き慣れない言葉がドニ語講座では多用されていますが、それで萎縮する事はないのです。ただ、見慣れた物が見慣れない形に変化しているだけだったのです。